LL紙パックリサイクル推進研究会

回収・リサイクル事例 【会員企業】森永乳業(東京都)

1.  森永乳業株式会社の概要
森永乳業株式会社(以下「森永乳業」といいます)は1917(大正6)年9月に日本煉乳株式会社として創業、1949(昭和24)年4月に設立された大手乳業メーカーです。牛乳類ばかりでなく、チルドカップコーヒーをはじめとする飲料、ヨーグルト、焼プリンをはじめとするデザート、アイスクリームのほか、ヘルスケア・健康食品や流動食・介護食など幅広い商品の製造・販売等を手掛けています。2021年3月31日現在、工場・市乳センター14か所、支社・支店・商品センター・管理センター6か所、研究・情報センター1か所で事業を展開し、2021年3月期の売上高は5,836億円でした。

2.  森永乳業のサステナビリティ
2.1.  かがやく“笑顔”のために
森永乳業では、2017年4月に「かがやく“笑顔”のために」というコーポレートスローガンを、2019年5月に「森永乳業グループ10年ビジョン」として
  Vision1:「食のおいしさ・楽しさ」と「健康・栄養」を両立した企業へ
  Vision2:世界で独自の存在感を発揮できるグローバル企業へ
  Vision3:サステナブルな社会の実現に貢献し続ける企業へ
の3つを挙げています。このなかで環境に関する取り組みとして、次のようなことを進めてきています。佐呂間工場及び別海工場においてコージェネレーションシステムで使用する燃料を重油から液化天然ガスに転換することにより熱量当たりのCO2排出量を削減したことを始めとして、直系全11工場の主燃料を重油から都市ガス・天然ガスに切り替えています。また、東京多摩工場、利根工場、神戸工場に太陽光パネルを設置するなど、自然エネルギーの利用も進めています。このほか、神戸工場ではコーヒー飲料製造時に排出されるコーヒーかすなどをエネルギー化して工場内で利用する取り組みも行われています。

2.2.  おからを乳牛の飼料にしてできた生乳を乳製品の原料に
森永乳業ではアルミ付紙パック入りの豆腐を製造しており、利根工場では、豆腐製造時に出るおからをすべて飼料として再利用しています。おからに乳酸菌を混ぜて密封した状態で保管し発酵させ、できあがった飼料はグループ会社を通じて酪農家に販売され、森永乳業の工場では、この飼料を給餌している乳牛から搾乳された生乳を一部原料として乳製品が製造されています。この取り組みは2017年度「第5回食品産業もったいない大賞」※(主催:一般社団法人日本有機資源協会、協賛:農林水産省、後援:環境省、消費者庁)で審査委員会委員長賞を受賞しました(第6回以降は公益財団法人食品等流通合理化促進機構が主催)。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/ondanka/mottai/attach/pdf/mottai-58.pdf

ピクニック(Piknik)

ピクニック(Piknik)

3.  紙パックの回収・リサイクルについて
3.1.  森永乳業のアルミ付紙パック製品
1981年にアルミ付紙パックでロングライフのハンディパック乳飲料「ピクニック」(Piknik)が発売されました。2022年2月現在、ピクニックはコーヒーをはじめとして8種類がラインアップされています。ピクニックは商品によって異なりますが常温での賞味期間は90日~120日間です。トクホ飲料「毎朝爽快」は80日間、果汁100%ジュース「サンキスト 100%オレンジ」は270日間と、いずれも常温での長期保存が可能です。このほか、宅配専用商品の「森永絹とうふ」、通信販売商品の「森永国産大豆絹とうふ」などのアルミ付紙パック入り豆腐も製造販売しており、これらのものは216日間の常温保存が可能です。
また、森永乳業グループ栄養病態部門の株式会社クリニコではアルミ付紙パックの流動食を複数種類製造しており、病院や介護の場面で活用されています。

 

3.2.  森永乳業社内で行われているアルミ付紙パックの回収リサイクル
アルミ付紙パック製品の製造工程で発生する損紙・古紙はほぼすべて再生紙工場に納入され、主にトイレットペーパーなどの家庭紙にリサイクルされていますが、この記事では製造工程ではなく本社や工場の事務所でのアルミ付紙パックの回収リサイクルについてご紹介します。
森永乳業では1998年からISO14001認証取得を推進しており、現在は、森永乳業の本社、研究所、首都圏支社、商品センター、直系工場(東日本市乳センター、西日本市乳センターを含む)および生産関係会社で認証取得しています。こうした取り組みのなかで3Rをはじめとする環境に対する社員の意識が醸成され、アルミ付紙パックの回収も自然に浸透していったとのことです。

3.2.1.  本社などの事務所での主な取り組み

会議室フロアの回収ボックス

会議室フロアの回収ボックス

(1)来訪者も参加しての回収
森永乳業本社には、各部屋に「マウントレーニア」「ビヒダス」「ピノ」などの商品名がつけられた会議室フロアがあります。社外の方との打ち合わせは主にここで行われ、同社のアルミ付紙パック飲料を飲みながら会議や打ち合わせが進められます。会議室フロアには回収ボックスが設置されており、会議等の出席者は各自、飲み終わった後の飲料容器を回収ボックスに投入することになっています。ストローを本体から抜いてストローの投入口へ、紙パックは容器の体積が小さくなるように上下のフラップ(耳)の部分を開いた上で平らな状態にしてから紙パックの投入口に入れます。平らにすることで容器の体積が小さくなり、より多くの紙パックを入れることができるようになり、また、飲み残しを減らす効果もあります。万が一中身が残っている場合には飲み切るか、あるいは給湯室で中身を捨ててから回収ボックスに投入しています。社員だけでなく、社外の方も積極的にリサイクルに参加している点が特徴的です。このフロアが完成したのは2018年ですが、再訪者が多いこともあり、回収リサイクルについての認知度が高く、飲み終わった後の紙パックをリサイクルに出すことが当然のこととして受け止められているようです。

 

 

事務所内の回収ボックス

事務所内の回収ボックス

(2)回収された紙パックの行方
会議室以外のフロアにも回収ボックスが設置されています。本社各フロアで回収された紙パックは建物内の保管場所に一時保管されたのち、東京多摩工場へ運ばれます。本社以外からも、例えば座間市の研究・情報センターをはじめ、関東にある複数の工場で回収された紙パックが東京多摩工場へ搬入されます。本社等から同工場へ運ばれる頻度は月に1~2回程度です。

3.2.2.  工場での主な取り組み
(1)社員による取り組み
森永乳業ではISO14001を取得していることもあり、リサイクルの必要性などはすでに根付いていますが、本社などの事務所と比較して、工場内では分別のための多くのごみ箱や回収ボックスが設置されており、具体的にどれをどこに入れるのかがわかりにくいものや間違えやすいものがあります。例えば、アルミ付の紙パック、汚れのついた紙類、シュレッダーくずは別々に処理される必要があるので、こうしたことを周知徹底させるため、社内で事業所独自の教育を行い工場スタッフにわかりやすく伝える工夫も行われています。

工場内の回収ボックス

工場内の回収ボックス

(2)工場見学者等へのアピール
工場見学にお越しいただいたお客様には、映像を用いてリサイクル啓発を行っています。工場内に設置された回収ボックスを工場見学者が興味深そうに見ているそうです。
また、地域のお祭りに企業として参加する際にも、包装材リサイクルポスター掲示、リサイクルに関するパンフレット配布、回収ボックス展示などを行っています。

3.3.  回収された紙パックのリサイクル
森永乳業の本社等の事務所から一旦東京多摩工場に運ばれた紙パックと工場で回収された紙パックは、週に1回程度の頻度で静岡県内にある製紙メーカーの工場へ納入され、主にトイレットペーパーなどの家庭紙の原料として利用されています。製造されたトイレットペーパーは主に小売店で販売されるなどしています。森永乳業の本社や研究所、工場では、こうした紙パックなどの古紙を原料の一部として製造されたトイレットペーパーを購入し、利用しています。社内で飲み終わった紙パックを回収しているだけでなく、リサイクルによってできた製品を社内で使用するという循環ができているのです。

3.4.  回収・リサイクルの現状と今後の課題
3.4.1.  回収ボックスへの異物の混入など
森永乳業の本社や工場では、3Rに関する考え方が十分に周知されているため、回収ボックス内に異物が混入していることはありません。打ち合わせなどで訪れた社外の人の協力も得られており、ストローと紙パックがきちんと分別されて回収されています。

3.4.2.  新型コロナウイルス感染症の影響
取材を行った2022年2月現在、新型コロナウイルス感染症の影響が残っており、例えば、社外の人との打ち合わせをオンラインで行うことにより会議室の利用人数が減少したり、工場見学を中止したり、地域のお祭りが控えられたりしている状況です。そのため、従来行われてきたアルミ付紙パックの回収リサイクルに関する取り組みのなかには、一時休止の状態になっているものもあります。新規の感染者数が減少傾向になっても、これらのものをかつてのように積極的に行える状況になるには時間がかかると思われます。

3.4.3.  今後の課題や取り組みについて
アルミ付紙パックの回収率向上のため、LL研の会員企業として業界団体の取り組みに積極的にかかわっていくほか、経済産業省「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」や環境省「プラスチック・スマート」フォーラムへの参加、「株式会社アールプラスジャパン」への資本参加などを行い、資源循環に関する様々な検討を行っています。

※記事の内容は取材当時のものです。現時点での取り組み内容等と異なる場合があります。

 

●取材日時:2022年2月17日(木)
●取材先 :森永乳業株式会社 サステナビリティ推進部 環境マネジメントグループ
URL    https://www.morinagamilk.co.jp/

※ アルミ付き紙パックはリサイクルすることが可能で、実際にトイレットペーパーなどに生まれ変わっています。消費者の皆様がご家庭で使用したアルミ付き紙パックの一部も回収・リサイクルされています。アルミ付き紙パックをどこで回収しているのかをお知りになりたい方は、下記サイトをご参照ください。
アルミ付き紙容器の回収拠点検索(外部サイトに移動します)
https://www.bellmark-schoolmilk.jp/alupa/recycle/search.html

 

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