LL紙パックリサイクル推進研究会

令和元年度 施設見学会

1.施設見学会について
当研究会では、毎年、LL紙パック(アルミ付紙パック)をはじめとしたリサイクル関連施設への見学会を実施しています。2019年度は10月30日(水)に実施し、会員企業18名が参加して大和板紙とリバースを見学しました。

2.見学先
2.1 大和板紙株式会社[大阪府柏原市]
大和板紙は白板紙やカラーボードなどの板紙、紙管原紙などを製造する再生紙メーカーで、1952(昭和27)年3月に設立されました。同社を中心に、古紙回収を行う須田商店、古紙機密書類の回収を行うダイワロジスティックス、リサイクル事業の企画を行う環境デザイン、紙管紙器製造加工を行う大三興業でダイワグループを構成し、古紙の回収から再生、リサイクル製品の製造までグループ会社で一括して対応しています。2019年4月には東京神田に営業所を開設し、見本を自由に取れる見本棚のほか、パッケージや書籍、ミルダン製(※)の什器を見られるショールームを設置しました。2008年11月にプライバシーマークを取得し個人情報の保護を行い機密書類をリサイクルしています。また、大和板紙では紙の循環システム構築に取り組んでいます。一例として、紙パックメーカーで発生したパッケージ損紙や酒造メーカーでお酒を充填した後に発生した損紙を回収してリサイクルした板紙を、お酒の内装箱や外装箱等の素材として活用しているケースが挙げられます。2011年4月にはFSC認証を取得し、100%古紙を使用した製品作りを行っています。

本社工場には抄造機が2機あります。1号機は8層の板紙製造に対応し、お菓子のパッケージ、ノートの表紙、卓上カレンダーなどを製造しています。2号機は9層の板紙製造に対応し、チップ、裏白チップ、特クラフト、紙管原紙など1号機よりも厚めの板紙を製造しています。納入された紙パック類ははじめにパルパーで攪拌され、直径7mmの穴で濾したものが次の工程へ進みます。紙と分離されたポリ・アルミは穴を通過することができずに装置の下にたまり、RPF(固形燃料)にリサイクルされ、大手製紙メーカーの熱源として利用されています。次の工程に進んだ古紙パルプは直径2mmの穴と0.27mmのスリットによって、不純物が取り除かれます。次にビーターと呼ばれる装置でパルプを均し、色づけされた後、網を貼ったいくつものシリンダーによって掬い上げられ、これらが層となり板紙になっていきます。このシリンダーの数は1号機では8本(8層の紙ができます)、2号機では9本(9層の紙ができます)です。その後、ドライヤーにより90~140℃の熱で乾燥させ、カレンダーと呼ばれるロールでアイロンをかけて、表面が整えられるとともに製品の厚みが調整されます。このように、板紙は複数の層で構成されていますが、それぞれ異なる種類の古紙を原材料としています。例えば、雑誌は中芯(表や裏ではなく中間の層)に、新聞紙は中芯や裏面に、紙パックは美しさが求められるおもて面に使用されます。

板紙で箱を製造する場合などは製品に強度を求められます。紙パックは繊維の長いパルプでできているため、板紙に強度を持たせるための原材料として、紙パックの価値は非常に高いと言えます。このほか、アルミ付紙パックなどの難再生古紙は、他の再生紙メーカーの使用が少ないため原材料の取り合いになりにくいことがメリットのひとつとなります。これらの古紙は、紙の繊維を取り出す際に時間と手間がかかることが敬遠される要因のひとつであるようです。

※ 牛乳パックなど飲料容器古紙と長繊維古紙を使用した原紙でできた段ボール。

https://www.ecopaper.gr.jp/daiwa/items/item7/post-18.html

(参考)大和板紙ウェブサイト「紙ができるまで」 https://www.ecopaper.gr.jp/daiwa/flow/

 

リサイクル工程などについて説明

リサイクル工程などについて説明

工場内を見学

工場内を見学

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紙パックも原料のうちのひとつ

紙パックも原料のうちのひとつ

板紙の製造工程を見学

板紙の製造工程を見学

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古紙を原料に製造された板紙

古紙を原料に製造された板紙

集合写真

集合写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.2 株式会社リバース[大阪府泉南市]
リバースは難再生古紙や機密書類等から100%古紙を原料としたトイレットペーパーを製造する再生紙メーカーで、2002(平成14)年に創業し、2004年2月からトイレットペーパーの製造を開始しました。ゼロエミッションを掲げ、エコロジー、クオリティ、セキュリティをミッションとしています。2004年9月に大阪府リサイクル製品認定を取得、2008年10月に和歌山県リサイクル製品認定を取得したほか、2005年7月にISO14001を認定取得しました。2006年9月にプライバシーマーク認証を取得し個人情報の漏洩を防止して、機密文書をリサイクルしています。

リバースでの主な原材料はコピー用紙などのオフィス系古紙で、官公庁等の機密書類が50%強を占めています。紙パックの割合はそれほど大きくはありません。機密書類は積み置きをせず、納品してすぐに溶解処理を行います。パルパーで溶解処理した後、熟成タワーで異物などを分離・除去しやすくし、次の精選工程でポリエチレンなど紙にならない異物を除去します。機密書類は段ボールを開封せずにパルパーに投入されるためファイルに綴じられたままのものもありますが、そうしたファイルの金具類もこの精選工程で取り除かれます。次の脱墨工程でインクが除去され、抄紙工程でトイレットペーパーの原反に、原反から製品の規格長さに巻き直され、さらに製品の幅にカットされてトイレットペーパーになります。古紙から分離されたペーパースラッジや廃プラスチックは、工場内のボイラーで熱回収しています。

リバースでは、現在、アルミ付紙パックを積極的には受け入れていません。トイレットペーパーの製造工程では特に支障があるわけではなく、アルミ付を受け入れている再生紙メーカーと同様、紙とポリ・アルミを分離することができます。しかしながら、分離されたポリ・アルミをボイラーで熱回収のために燃焼させると、溶けたアルミがボイラーの燃焼室内にこびりついてしまい、これを取り除くために頻繁にメンテナンスを行う必要があるのです。

リバースでトイレットペーパーを製造するにあたり紙パックは必ずしも必要ありませんが、有用な原材料のひとつです。機密書類のなかには例えば色つきの封筒などが入っており、これらのものが製品の白色度を下げる要因になっています。これに紙パックを利用することで白色度を上げることができます。また、紙パックの繊維の長いパルプは製品の強度を上げることができます。製品に使用する紙パックの割合が高すぎると水に溶けにくくなってしまうため、紙パックの使用割合を調整し、適切な強度や白色度を持つ質の高い製品としています。また、オフィス古紙よりも紙パックの方が原材料としての価格が高いこともあり、コスト面も考慮して紙パックの割合を決めているそうです。今後、ペーパーレス化が進みオフィス古紙が減少することを考えると、紙パックは引き続き重要な原材料と考えているとのことでした。

(参考)リバースのウェブサイト「製造工程」  http://www.rebirth-inc.jp/process/

リサイクル工程などについて説明

リサイクル工程などについて説明

工場内を見学

工場内を見学

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原料となる紙パック

原料となる紙パック

分離されたポリエチレン等

分離されたポリエチレン等

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トイレットペーパーのジャンボロール

トイレットペーパーのジャンボロール

集合写真

集合写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.施設見学会を終えて
今回見学した2件の再生紙メーカーは、両社共に紙パックを原材料としていましたが、アルミ付紙パックを受け入れているかいないかの違いがありました。

共通点は両社共に紙パックを原材料としており、板紙とトイレットペーパーの違いはあるものの、それぞれの製品に必要な特性を得るために紙パックをうまく利用していただいているところでした。板紙の場合は紙パックを美しさが求められるおもて面の材料や強度を増すための材料として使用されていました。トイレットペーパーの場合にも白色度や強度の調整に使用されていました。紙パックは表面のポリ・アルミを分離する必要があるため、リサイクルに際し処理の工程が複雑になるものの、分離したパルプは白色度とその強度が高い価値があるものと再認識しました。

一方、異なる点としてアルミ付の紙パックの受け入れに積極的かどうかということが挙げられます。大和板紙では酒造メーカーから納入したアルミ付紙パックの充填損紙なども原料として板紙を製造しています。ここでは紙と分離したポリ・アルミはRPFにリサイクルされ大手製紙メーカーで熱源として利用しています。リバースではトイレットペーパーを製造していますが、アルミ付紙パックはほとんど受け入れていません。トイレットペーパーを製造する工程では問題はないのですが、分離されたポリ・アルミを自社工場内のボイラーで燃焼させる際にアルミが燃焼室内にこびりついてしまうという問題があるからです。燃焼室内にこびりついたアルミは取り除くには多くの手間と時間がかかるため、総合的に判断してアルミ付は積極的には使用しないとのことでした。今回の見学では再生紙メーカーでアルミ付紙パックを処理する際の課題のひとつが確認できました。アルミが入った燃料の使用上の課題については確認していく必要があるかもしれません。アルミ付紙パックのリサイクルにおいてはこれまで「紙」の部分だけに注目しがちでしたが、残りのポリ・アルミの処理についても総合的に考えていく必要があると感じました。

 

LL紙パックがリサイクル可能であることをより多くの方々に知っていただくとともに、リサイクルへの取り組みが今後ますます活発になっていくことを願って、当研究会では引き続き情報発信に努めて参ります。

 

  • 記事一覧へ

カテゴリー CATEGORY

最近の記事 RECENT ENTRY

アーカイブ ARCHIVE

月を選択

LL紙パックリサイクル推進研究会のWEBサイトに関するお問い合わせはこちらへ

ページの先頭へ